第一話

14/76
前へ
/100ページ
次へ
「風紀委員です!動かないでください!」 足音の正体は風紀委員だった。 きっと誰かがこの現場を目撃して風紀に伝えたのだろう。 風紀委員は俺と会長に近付いてきて、まず会長を見た。 その瞬間驚いた顔をする。 無理もない。 暴力の現場だと聞いて駆けつけた場に、全校生徒のトップがいるのだから。 驚いた顔のまま今度は俺の方を見る。 すると会長を見た時よりもさらに驚いた顔をした。 何故……? 「君は…」と呟き風紀委員は暫く俺を見つめてきた。 俺は小首を傾げ、彼に問う。 「ええと、何か?」 すると風紀委員は顔を赤くし、最初にえ、だとか、あ、だとか戸惑った後、フッとそっぽを向いてしまう。 「…何でもないです…」そうボソッとした呟きが聞こえ、その後に彼は大きく咳払いをした。 「…ところで、暴力現場だと聞いて来たのですがそれは本当ですか?目撃証言によると被害者は黒髪だったそうですから…君になりますね?」 俺はただ無言で微笑む。 風紀委員は戸惑いながらも話を続けた。 「となると…生徒会長、貴方が加害者ということでしょうか?この場にいるのは貴方だけのようですが…見た所怪我もなさそうですし」 「……」 会長も俺のように無言で風紀委員を見つめた。 否定はしないようだ。 会長の額からは汗が垂れている。 汗をかく程の気温ではないというのに、不思議だ。 お互い無言のままでいると、風紀委員がため息をつく。 「現場を抑えていないのでなんとも言えませんが……まぁ、会長が加害者にしろそうじゃないにしろ、彼が何者かに暴行を加えられたのは見ればわかりますよね」 風紀委員が俺の姿を上から下までじっくりと観察する。 見てみると確かに土が付いていたり足跡が付いていたりと汚れていた。 これで何もされていないと訴える方が難しいだろう。 それに鏡を見ていないので何とも言えないが、きっと俺の頬には先ほど眼鏡の彼に殴られた痕もあるはずだ。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1403人が本棚に入れています
本棚に追加