第一話

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「見事なまでにあざだらけだな」 保険医は俺の体についたあざをまじまじと見つめる。 俺は痛みを感じないからわからなかったが、あざがつくほど強く殴られていたのか、本当に目を付けられたのが俺で良かったな、と思う。 俺の後ろには先ほどの風紀委員が俺を見守っていた。 それとも監視しているのか。 まぁどちらでも良いが。 彼の名前は神宮寺龍(ジングウジリュウ)というらしい。 ここに来る道すがら、名前を知らないのも不便だと思い聞いたのだ。 すると彼は 「あっ、僕は、じっ神宮寺、龍です」 とこれでもかというぐらい噛みながら答えてくれた。 「二年です…」 「やぁ、じゃあ同級生だ」 「ええ、まぁ…」 「じゃあ此れからは神宮寺君と、呼んでもいいかい?」 「ま、まぁ、良いですけど?」 俺が微笑むと彼はフッと横を向いてしまった。 さっきから表情が笑ったりムッとしたりと忙しい人だと思った。 沢山の表情をお持ちのようで、羨ましい。 そんなやりとりがあって今は保健室だ。 保険医の烏丸千景(カラスマチカゲ)先生が面倒臭そうに俺の体に湿布を貼っている。 「よくもまぁ、こんだけあざ作って平気な顔してるもんだ」 「感じにくいので」 「あぁ、そうだったな」 湿布を貼り終わったらしく烏丸先生が俺に脱いだシャツ等を渡してくれた。「大事にな」と言うと同時に烏丸先生は俺の体をバンッと叩く。 俺は叩かれた事には反応せずに「有難うございます」とだけ返し、シャツを受け取った。。 すると烏丸先生はつまらなさそうに舌打ちをし、「此れやったら大抵のやつは痛がって怒るんだけどよ」と頬杖をつく。
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