第一話

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「まぁ見たところ異常はない。もっと気をつけて廊下を歩け」 「はい…すみません…それで、不知火さん。今日の授業はもういいから、部屋でゆっくり休んでください。安静にしてた方が治りも早いですから」 「いや、俺は大丈夫ですよ。平気です」 「ううん、平気じゃないよ。感じていなくても体はしっかり傷ついているんだ。強がってたら悪化するかもしれないからね。わかったかい?」 葉鳥先生は普段は敬語だが、こうやってたまに敬語が抜ける時がある。 大体は他人を説得させる時だ。 葉鳥先生は一見流されやすそうな人に見えるが、それは外側だけで中身にはちゃんと芯を持ってるのだ。 彼の唯一の教師らしい姿だった。 ちなみにこれを言うと先生は拗ねる。 とにかく、確かに先生の言うとおり、ただ感じていないだけで体はあざが残るくらいダメージを食らっているのだ。 俺は葉鳥先生の言うとおり早退することにした。 アキにも早退するという旨の連絡を入れる。 すぐにアキから返事が返ってきた。 <後で詳しく> と、簡潔な文が書かれていた。 元々アキはメールは簡潔に済ますタイプだ。 ただ今回は時間的に授業中ということもあり、さらに簡潔になっている。 そういえば会長は授業に出れたのか… まだあそこで呆然と立っていたらどうしようか… 「なぁ葉鳥先生よ。さっき自分の怪我を放置しようとした奴に言われても説得力がないと思わないか」 烏丸先生が呆れた顔で言う。 確かにその通りだ。
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