第一話

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まぁそれはさておき、実に奇妙なものだ。 何故会長はあの輪の中に入らないのだろうか。 何も喋らず、目の前に広がる編入生君ワールドをただただ見つめている。 俺がじっと彼らを観察していると、俺の視線に気付いたのか会長が此方に顔を向けた。 俺と目が合うと会長は歩みを止める。 俺はとりあえず会長に手を振った。 すると会長がいない事に気がついた編入生君が会長の名前を大きな声で呼んだ。 それに会長は反応せず此方を見つめる。 自分の呼びかけに動かない会長に痺れを切らしたのか編入生君は会長に腕を取り引っ張った。 会長はよろめき、俺への視線が外れた。 視線が外れたと同時に俺の携帯がメールが届いた事を知らせる着信音が鳴る。 何てことない、初期設定の無機質な音だ。 <今何処だ> 送信者はアキからだった。 時間帯的には一日の授業が終わった頃か。 俺は取り敢えず「自室」とだけ打ち込み、送信する。 窓の方にもう一度顔を向けると、既に会長達はその場から移動していた。 ただ編入生君の大きな声はまだ微かに聞こえてくる。
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