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「不審者って何だよ…本当嘘つくの下手だなユキ…この学校がとんでもねぇ山の奥にあるの忘れたか?学校を囲ってるクソたけぇ塀は?警備の奴らは何してる?」
「嘘じゃない。本当に不審者が来たんだよ」
アキの顔からズルッと手が落ちる。
壁から背を離すとアキはソファに座った。
俺もアキに続いて向かい側へと座る。
「わかってんだかんなやったのは生徒会の糞共だってよ」
「……そっか」
「ハァ…何庇おうとしてんだか」
アキが今日一番の深い溜息をついた。
やはりアキは溜息が似合う。
「庇ってはいないよ。俺がそうしたかっただけだから」
「客観的に見て『庇う』っつーんだよ、お前がやった行動は」
アキは本棚に収まっていた国語辞典を手に取ると、俺に向けて投げる。
庇うで調べやがれ、と言ってきたので、俺は言われたとおり国語辞典で『庇う』について調べ始めた。
そんな俺をじっと見てきたアキだったが、暫くして俺の隣に座り、横から頭を包み込むように抱きしめてきた。
体がアキの方向に傾き、少々読みづらいが俺は構わず国語辞典を眺める。
「俺はお前が一番大事だ。それ以外なんてどうでもいい」
「…うん」
「お願いだから自分を大切にしてくれ。お前がいなくなったら…俺は…」
アキの抱きしめる力が強くなる。
さすがの俺も国語辞典を閉じ、アキの方へと目線を向けた。
アキは俺の肩に顔を埋めている。だから目が合うことはなかった。
そのまま俺は、されるがままにアキに抱きつかれていた。
「アキ」
「…なんだ」
「すまないね」
「…あぁ」
アキは暫く俺から離れなかった。
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