第一話

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会長と副会長によくわからないけれど怒られた日から数日。 俺の体に出来たあざも完全とまではいかないが殆ど見えなくなった。 あざが出来た日にアキに見せたら、アキはプルプルと震えて 「やっぱぶっ殺す」 と暫く不穏なオーラを纏っていたので大変だった。 まぁ今はそれもなくなり、特に新たな面倒事が起きる事もなく平穏な数日を過ごさせてもらった。 今日も時間通りに目が覚め、自室から出て共同部屋へと行く。 つまりはリビングだ。 共同部屋のはずだが最近は殆ど同室者を部屋で見かけないのでただの一人部屋になっていた。 冷蔵庫を開けて中身を確認する。 俺の味覚は痛覚ほどではないがやはり鈍い。 しかし、何か食べなければ気付かぬうちに餓死してしまう。 だからどんなに味を感じなくても薄味でも食べ物を口に入れなけらばいけないのだ。 楽しいであろう食事の時間は、俺にとっては億劫なのだ。 味付けを濃くすれば普通の人間が感じるくらいの味が出てくるのだがそれは体に悪いとアキが許してくれない。 じゃあ自分で作ろうと思っても俺は不器用なので料理など出来ない。 強いて出来るというのなら目玉焼き程度だ。 それだと味付けらしい味付けは出来ないので俺は目玉焼きを食べる時、唐辛子を山ができるほどかける。 まぁ目玉焼きだけに限らないのだが。 辛いものは刺激が強いので他の味覚よりも良く伝わってくる。 なので俺は唐辛子を重宝していた。 ただこれもアキは体に悪いと怒るのでアキがいない所でこっそりとやる。 今日の朝も、食パンを一枚焼き、その上にマーガリンと唐辛子をかけ食べる。 此れが美味しいのかは正直わからないが、味覚を感じるだけ良いので俺は食パンを一口齧った。 うん、辛い。 アキに見つかったらまた怒られて没収させられるので早く食べてしまおう。
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