第一話

30/76
前へ
/100ページ
次へ
会長はなんとも言えない表情で俺を見てくる。 その表情には驚きと困惑と、その他もろもろがごちゃまぜになったかのような、文字通り『なんとも言えない』ものなのだ。 「お、お前は…一体…!」 会長は立ったまま俺を見下ろす。 俺が何も喋らずただ笑っていると、部屋のインターフォンが鳴った。 時計を見ると針は8時を指していた。 いつもアキが来る時間帯だ。 俺は会長を放っておいて扉を開ける。 予想通りそこにはアキが居て片手を挙げて「おはようユキ」と挨拶をしてくれた。 俺もそれに続いて「おはようアキ」と返す。 「なんだお前、準備出来てねぇじゃねぇか」 「あぁ、ちょっとお客さんが来てね」 「客?こんな朝っぱらか―――」 アキが俺の後ろを覗き込むと会長を見つけたのか顔を顰めた。 俺を押しのけ、会長の元へとズンズン歩いていく。 アキは会長の肩を掴み、無理やり自分の方へと振り向かせるとシャツの襟を掴んだ。 「てめぇ…!何故ここにいやがる!」 「……」 「なんとか言いやがれっ!」 「…悪い」 アキが顔を近付け会長を責めると、会長はポツリと一言呟いた。 アキはその言葉に目を見開くもすぐにキッと会長を睨む。 会長は襟を掴んでるアキの手首を掴み自分の襟から手を放させる。 会長は襟を直し、アキに目線を寄越した。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1403人が本棚に入れています
本棚に追加