第一話

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「…一つ聞かせてくれないか」 「…あ?」 「……不知火雪弥は何者なんだ…」 会長の問いかけにアキは少し考えた素振りを見せる。 「お人好しの馬鹿」 アキは会長の問いにそう答えた。 鼻をフンと鳴らし、アキは腰に手を当てた。 その姿から自身に満ち溢れていることが分かる。 会長も予想外のアキの返答の早さに口を半開きにしてポカンとアキを見つめていた。 その姿を見てアキはニヤリと笑う。 「ユキはな、感情ってもんがわからねぇ。だから自分の気持ちもわからねぇ」 「……」 「だからか知らねぇけどよ、どんな奴にも手を差し伸べちまうんだよ。善人でも悪人でも…たとえ自分を殴ってきたやつでも」 「…っ」 「だけど自覚がねぇ。つまりだ、ユキに下心なんて欠片もねぇんだよ。おめぇらみたいな奴と違ってよ」 「……そうか」 「…チッ。言っとけどな、これはてめぇの為に教えたわけじゃねぇから」 「……」 「ユキ自慢だ」 「…有難う」 会長は満足したのか礼を言うとフラ~と部屋から出て行った。 アキは会長の背中に向かって「二度と来んなよ」と吐き捨てた。 言い過ぎだと俺はアキを咎める。 結局会長は何をしに来たのか最後までわからなかったが、俺としては会長が疲れているように見えたのでそれが心配だった。 眠れていないとも言っていたし、休んでほしいなと思う。 取り敢えず、まずは学校に行かなければないので俺は急いで準備をした。 実際は急がなかったのでアキに怒られてしまったけど。
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