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さすがに本当に困ってきて俺は思わず「困ったな…」と口に出してしまう。
すると今まで此方を遠巻きに見ていたクラスメイトの皆が一斉に席から立ち、編入生君を押さえた。
「不知火から離れろこの馬鹿っ!」
「何だよお前らっ!!邪魔すんなよ!!」
「五月蝿い!アンタこそ不知火様の邪魔しないでよ!」
「俺は邪魔なんてしてねぇよ!ただ食堂に行こうって誘ってただけだ!」
「それが邪魔してるんでしょ!不知火様さっきから断ってるじゃん!」
クラスメイト達のおかげで、有難い事に俺は編入生君の腕から離れることが出来た。
掴まれていた手首を見ると、手の跡がくっきりと出来ていた。
体に出来たあざが消えてきたというのにまた新たなあざが出来てしまう。
今週の俺はどうやら運が悪いらしい。
「紘夢っ!紘夢に乱暴しないでください!」
「ちょっとアンタさ、何紘夢の優しさ無下にしてんの?折角アンタみたいな庶民を紘夢が誘ってんのに」
編入生君に解放されたと思ったら今度は取り巻き達に絡まれてしまった。
アクセサリーを沢山つけたハニーブラウン色の髪の生徒が俺を睨んでくる。
その後ろでも背の高い片目が隠れた生徒が、何も言わずただただじっと俺を睨んできていた。
副会長は押さえられてる編入生君を助けに、編入生君が暴れてしまったせいで殆ど乱闘に近い輪の中に入っていった。
「悪いけど、俺は友人と食べる約束をしてるから。それに…」
「…?」
「俺は俺のやりたいようにやっちゃ駄目なのかい?」
その言葉にハニー君は何も言わなくなった。
片目君はハニー君が黙った今もじっと睨んでいた。
俺に何か用かい?と声を掛けると、フッとそっぽを向いてしまった。
「不知火!俺達に任せてお前は行けっ!」
「僕達がこいつを押さえてますから!」
「でも…」
「大丈夫ですから!さぁお早く!」
「すまないね…後でお礼させてくれ」
頼もしいクラスメイトに後は頼み俺は急いで教室を出る。
教室を出て数歩歩くと、中からガシャーンと何か大きな音が聞こえてきて心配になってくる。
だがここで戻ってもまたややこしい事になりそうなので、謝りながら俺はその場を離れた。
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