プロローグ

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「見た目で判断するなよ!!最低だっ!!」 突然廊下から聞こえてくる怒声にも近い声。 教室にいる生徒がザワザワと騒ぎ始める。 俺は何事かと思い教室の扉に手を掛け開けようとする。 それをクラスメイトが止めてくる。だけども俺はやめない。 何故って気になるからだ。 扉を開けると大勢の人間が右の方向を向いて佇んでいた。 表情は険しい。 その中の一人の生徒が、俺が扉を開けた事に気付き此方に振り向き俺と目があった。 彼が誰かはわからない。 ただ見たことはある、ような気がする。 冷たい目だった。 彼はすぐに前へと向き直す。 俺もその方向へと目を向けると、小柄で髪はモジャモジャでぐるぐるの眼鏡を掛けた男子が――― って…あれ? 俺が頭の中の情報を整理していると小柄な生徒が俺の存在に気付いた。 「!?お前見たことないな!!誰だ!?俺は椎名紘夢(シイナヒロム)!!紘夢って呼べよな!!お前の名前なんて言うんだ!?綺麗な顔してるな!!」 ようやく情報を整理し終えた俺は、彼こそが噂の編入生君なんだと気付く。 想像していたものよりも遥かに見た目はボサボサだった。 眼鏡もそれでちゃんと見えているのかと思うくらい彼の目が見えない。 そして相手を目の前にして必要ないであろう大きな声量。 鼓膜が破れると言っていた生徒も居たが嘘ではなかったようだ。 半信半疑にもなるだろう。 人の声で鼓膜が破れるなんて聞いたことがない。 とにかく此れで、俺は彼が目指す「王道物語」に巻き込まれてしまったわけだ。 つまり俺は脇役的存在。 ただこの物語は「王道」ではない、悲しくも「アンチ王道」なのだ。 大抵は脇役が最後HAPPYENDを迎えるが、果たしてこの物語はどうなるかな? 君たちはどう想像する?どう感じる?どちらに賭ける? 俺には変な体質は備わっているけれど、未来が予知できる能力は備わっていないから俺にもわからないや。 それじゃあ自己紹介でもしておこうか。最低限の礼儀としてね。俺は―――
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