第一話

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「高等部に上がると生徒会長に任命されて、  さらに媚びへつらう人間が増えて…本当に日常がつまらなかった。  こんな人生早く終わらないかと思っていた。  …そんな腐りきった時に出会ったのが紘夢だ。  紘夢は今までの俺の人生の中で一番輝いて見えた。  誰にでも分け隔てなく接して、明るくて、  思った事を正直に話してきて…嬉しかった。  まだこんな人間がいたんだなと。  俺は紘夢しか見えなくなって…  紘夢以外の事はどうでもよくなって…  ただ紘夢にだけ愛されたくて…  仕事も放棄して紘夢を独占しようとか考えて…お前に…あんな事…」 「……」 「結局俺も、今まで俺が忌み嫌ってきた奴らと変わらなかったって事だ。本当にすまなかった……」 「いいえ」 「…紘夢が最高に優しい人間に見えた。でもこの前…その、お前に庇われた時に変な感じがしたんだ」 「変な感じ?」 「紘夢は、自分は優しいから許してやるっていつも言っていた。俺もその時は心が寛大なんだと思っていた。  でも、お前に庇われた時…  こいつも紘夢と同じで『優しいから』なんだと思った。  でもお前は『自分の自己満足』と答えた。  優しいからではないのかと思った。  なんて自分勝手な奴なんだとも思った。  でも…何故か紘夢に許される時より…  胸のあたりが暖かくなって気持ちが軽くなって…  気付けば一人で情けない程泣いていて…」 「わぁ」 「それから色々と考え込んでしまった。  頭の中グシャグシャになって、日に日に罪悪感もこみ上げてきて、  どうしようもなくなって、  考えれば考えるほど紘夢がおかしく見えて、  優しいって何だとか、何が優しいのかとかわからなくなって、  眠れなくなって…  パニックになって何故かお前に会いに行って…  でもまたお前に何か言われたらスッキリした。  不思議だった。  そして今度はそれが何故かをここで一人考えてた…  そしたら落ち着いてきて、今までの事をじっくり考え直したら…    俺は、俺達は、  今取り返しのつかないことをしているのではないかと  不安になってきた…そこでまたお前が現れた。  おかげで俺の気持ちははっきりとした」  
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