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会長は俺に体を向けて土下座をする。
まさか会長が土下座をしてくるとは思っていなかったので、さすがの俺も少し驚いた。
俺が顔を上げてくれるよう頼むと、会長は躊躇しながらも顔を上げる。
そのまま俺を真っ直ぐ見据え、言葉を紡いだ。
「許してくれとは言わない。ただ、償いをさせてほしい」
「…まぁ許す気はそもそもありませんよ」
俺が冷たく言い放つと会長は悲しそうに目線を下げる。
そんな会長の手を取り、俺はギュッと握った。
「許す事なんて何一つありませんからね」
俺がヘラっと笑って会長に言った。
会長は握られた手と俺を交互に見つめる。
そんな行動に俺は少し笑ってしまった。
すると会長は頬を赤くしまた俯いてしまう。
きっと自分のイメージ象とは掛け離れた行動をしてしまったから照れているのだろうと思う。
「でも償いは必要ですよね。あ、俺にじゃありませんよ?この学校にです」
「……」
「自信を持ってください。貴方自身が好きでついて行く人も必ずいますよ。大事な事は一人一人、相手をちゃんと見る事。それだけです、お仕事、頑張ってください」
俺はそう言うと会長の手を離し、その場から立ち上がって庭園ハウスを後にした。
会長に「待てっ!」と呼び止められたが正直時間がないので微笑み返し庭園ハウスを出て行く。
携帯でアキに連絡を取ろうと思ってポケットに手を差し込むが、携帯がない。
シャツやズボン、ポケットというポケットを確認したが携帯は所持していなかった。
何処かで落としたか、それとも教室に置いてきてしまったのどちらかだろう。
どちらにせよ、アキに連絡を取れないことに変わりはない。
困っていると昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
結局今日はゆっくり昼休みを過ごす事は出来なかった。
「不知火……雪弥…」
俺が去った後の庭園ハウスでは、会長が俺の名前を呟き、俺が握っていた左手をじっと見つめていた。
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