第一話

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あの後俺はアキにこっぴどく怒られた。 携帯をちゃんと所持する事も勿論だが、手首にあざを作った事にもだ。 今度から編入生君と出会ったら無視しろと言われたが、無理に等しいと思う。 彼はどんな事があっても自分の思ったとおりにならないと納得しない質なのだ。 きっと無視したら後ろから蹴られて終わりだ。 でもまぁ、関わるのも何かと面倒なので極力接触しないようには気を付けるつもりでいる。 あれから2日後の昼休み。 昨日も編入生君の集団が教室に訪れてまた一緒に食堂へと騒いで大変だった。 アキが怒ってこれでもかという声で怒鳴り説教コースに持ち込んだが、おかげでアキも編入生君に目を付けられたらしい。 仲間入りおめでとう、と声を掛けたら「…まぁこれで、お前への興味が少しでも逸れるなら…な」と呟いた。 だがその後に項垂れていたのでやはり嫌なものは嫌らしい。 まぁそんなこんなで今日こそはゆっくり昼休みを過ごそうと弁当を広げたら、ガラッと教室の扉が開かれる。 今日もかぁ…と気分を下げると一昨日昨日と少々違う。 普通だったら悲鳴やらコソコソとした話し声が聞こえてきて、空気は不穏になるのだが、 今日は何だかざわついている。 俺はどうしたんだと顔を上げると目の前に会長が立っていた。 目の下からは隈はすっかり消え、以前よりも生気に満ちた表情をしている。 本来の彼の姿を取り戻したような感じであった。 「不知火。少しいいか」 「やぁ会長。元気になったようで何よりです。  それで、どうかしましたか」 「あぁ、あんな事があった後で悪いが頼みがある……いいか?」 「俺でお役に立てるのなら」 そう答えると会長は嬉しそうに微笑みこっちだ、と俺を導く。
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