第一話

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そう俺が悩んでいると廊下から大きな足音が聞こえてくる。 一歩一歩が相当重いのかズンズンという効果音でも鳴っているかのようだった。 突如バンッと生徒会室の扉が開かれ、俺と絢也先輩は音に釣られて其方に振り向く。 「ユキっ!!っておい何してんだアンタちけぇんだよコラ!!!」 何処の不良が入ってきたかと思いきやよく見たらアキだった。 俺達の姿を確認したアキは大声で怒鳴って此方に近付き、俺と絢也先輩の間に足を入れてくる。 アキがソファに足を上げたせいでソファが揺れる。 アキを見上げると、アキは腕を組んで俺達を睨んでいた。 そんなアキを見ても俺は笑うことをやめない。 絢也先輩は何があったんだと言わんばかりにポカンとしていた。 「アキどうしたんだい」 「どうしたってっ!……あーそりゃあれだよ……」 アキは急に押し黙り、もごもごと何かを喋っているのだが聞き取れない。 俺が絢也先輩の方に顔を向けると、絢也先輩と目が合う。 俺は首を傾げて困ったように笑う。 絢也先輩もまた困ったように笑ってくれた。 「とにかくだ!ちけぇ!一回離れろ!」 「落ち着いてくれアキ。絢也先輩と話してただけだよ」 「は、な、れ、ろ」 アキは俺達の鋭い睨みを効かせながら強く言った。 俺と絢也先輩はアキの思考がわからないと首を傾げながらも、少しだけ離れる。 アキは俺と絢也先輩の間に生まれた隙間に無理矢理体をねじ込んできた。 少ない隙間に無理矢理ねじ込んだものだから、アキの体は横に向いている。 しかも座っているというかは、ソファに片足だけ乗せて体重を掛けた状態で絢也先輩を睨みつけている。 「行儀が悪いよアキ」 俺がそう言うとチラリとアキは此方を向くが、体制は元には戻さなかった。
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