第一話

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「別に…ユキがやるってんならやってやるけどよ」 「本当か!?」 アキの了承の言葉に絢也先輩が勢いよくソファから立ち上がる。 その顔は爛々と輝いていた。 アキは絢也先輩の見たことのない姿に戸惑いたじろいでいる。 そんな様子に気がつかない絢也先輩は、そのままの勢いでアキの腕を掴んだ。 急に距離を縮めてくる絢也先輩に、アキは動けずにいた。 「助かる。ありがとう」 絢也先輩はお礼を言うとすぐにアキの手を放し、机へと向かった。 その机には何十枚もの紙が積み重ねられている。 小さく「…ヨッ」と声を出しながら絢也先輩はその紙束を持ち上げた。 紙束が崩れないようにゆっくりと此方へと振り向く。 「さっそくで悪いが、此れを頼む」 絢也先輩は「簡単な計算とか文章を打つだけだから大丈夫だ」 と付け足し、テキパキと俺とアキを机に誘導し、紙束を丁度2等分に分けそれぞれに渡す。 この無駄のない動きから、彼が生徒会長なのだという事実が感じられる。 俺は渡された紙束の一番上のものを手に取り、書かれている内容を眺めた。 絢也先輩が言ったとおり、使われた費用などの計算や、資料の作成等のようだ。 これならば確かに生徒会役員ではない俺でも出来る。 ふとアキの方に目をやると、アキは早々に作業に取り掛かっていた。 嫌々ながらも一度引き受けたら最後まで責任を持ってやる、真面目な彼らしかった。 その流れで絢也先輩の方を見ると、アキ同様作業に取り掛かっている。 紙束一枚一枚に目を通し、判子を押していた。 表情は真剣そのものだ。 今までの遅れを取り戻そうと必死に頑張っているようにも見える。 俺も二人を見習わねばと紙束から一枚取り、パソコンのキーボードに手を掛けた。
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