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「別に…ユキがやるってんならやってやるけどよ」
「本当か!?」
アキの了承の言葉に絢也先輩が勢いよくソファから立ち上がる。
その顔は爛々と輝いていた。
アキは絢也先輩の見たことのない姿に戸惑いたじろいでいる。
そんな様子に気がつかない絢也先輩は、そのままの勢いでアキの腕を掴んだ。
急に距離を縮めてくる絢也先輩に、アキは動けずにいた。
「助かる。ありがとう」
絢也先輩はお礼を言うとすぐにアキの手を放し、机へと向かった。
その机には何十枚もの紙が積み重ねられている。
小さく「…ヨッ」と声を出しながら絢也先輩はその紙束を持ち上げた。
紙束が崩れないようにゆっくりと此方へと振り向く。
「さっそくで悪いが、此れを頼む」
絢也先輩は「簡単な計算とか文章を打つだけだから大丈夫だ」
と付け足し、テキパキと俺とアキを机に誘導し、紙束を丁度2等分に分けそれぞれに渡す。
この無駄のない動きから、彼が生徒会長なのだという事実が感じられる。
俺は渡された紙束の一番上のものを手に取り、書かれている内容を眺めた。
絢也先輩が言ったとおり、使われた費用などの計算や、資料の作成等のようだ。
これならば確かに生徒会役員ではない俺でも出来る。
ふとアキの方に目をやると、アキは早々に作業に取り掛かっていた。
嫌々ながらも一度引き受けたら最後まで責任を持ってやる、真面目な彼らしかった。
その流れで絢也先輩の方を見ると、アキ同様作業に取り掛かっている。
紙束一枚一枚に目を通し、判子を押していた。
表情は真剣そのものだ。
今までの遅れを取り戻そうと必死に頑張っているようにも見える。
俺も二人を見習わねばと紙束から一枚取り、パソコンのキーボードに手を掛けた。
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