第一話

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昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響く。 その音のせいで意識はパソコンから引き離された。 どうやら夢中で作業をしていたようだ。 気付けば高かった紙束も、殆どなくなり残り少しとなっていた。 アキと絢也先輩もチャイムの音で顔をあげる。 絢也先輩が俺とアキを交互に見て、驚いた顔をする。 「…仕事が早いんだな」 感心したような声を出す絢也先輩に、俺は何も言わず微笑んだ。 アキは反応もせず椅子から立ち上がり俺の方へと向かってくる。 「オラ、教室戻んぞ」 アキは俺の腕を掴み無理に立たせる。 椅子が大きな音を立てながら後ろへと下がった。 急いでいるのかアキは手の力を弱めない。 「アキ、どうかしたのかい」 俺がそう問いかけても、アキは何も答えなかった。 ただ動きを止め、此方をじっと見つめてくる。 絢也先輩の方を見ると、心配そうに俺達を見ていた。 何だか申し訳ない気分になった。 「あ、絢也先輩、お先に失礼します」 「え、あ、あぁ、いや、助かった。礼を言う」 絢也先輩が喋ってる間にアキの行動は再開する。 無理矢理引っ張られ危うく転びそうになった。
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