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目覚めると一之瀬は既にいなかった。
きっと部活の朝練にでもいったのだろう。
今日も適当な物を腹に詰め込んで学校へ行く支度をする。
すると部屋に着信音が鳴り響いた。メールのようだ。
差出人を確認するとアキだった。メールを開いて内容を確認する。
『用事が出来た。先に行け』
そうか、今日はアキが迎えに来てくれないかと少し寂しい気持ちになるも、了承の返事をして携帯を閉じる。
自分のペースで準備を終わらせ、部屋を出る。
エレベーターにを呼んで乗ろうとすると先客がいた。
「不知火?」
「やぁ絢也先輩、おはようございます」
「おはよう」
絢也先輩だった。昨日同様血色の良い肌色でひとまず安心した。
今はちゃんと眠れているようだ。
エレベーターに乗り込んで絢也先輩の隣に並ぶ。
「絢也先輩、仕事の方はどうですか?」
「あぁ、それが…」
絢也先輩が気まずそうに口篭る。
目線を俺に向けたり違う方向に向けたりと、まぁ所謂泳がせているのだが。
「実はな…あっと……放課後、仕事しようと思ったらな…紘夢達が来て…うん…パーティー騒ぎになってな…仕事、出来なかった…」
顔を下げてそうぼそぼそと呟く絢也先輩は目に見えているかのようにどんよりとしていた。
「そっかそっか、実に楽しそうだ」
「…怒ってるか?」
しょぼくれた瞳で絢也先輩はチラリと俺を見る。
まるで悪い事をして叱られた子供のようだった。
その姿が俺様会長の肩書きに似ても似つかなくて面白くてしょうがない。
「いいえ?じゃあ今日もお仕事手伝いますね」
「…悪いな」
「気にしないでくださいよ。俺は絢也先輩とまたお話出来て嬉しいんですから」
そう伝えると絢也先輩はふわりと微笑んで丸まっていた背筋を伸ばす。
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