第一話

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ここまで感情が目に見える人は珍しいなと思う反面、とても助かるなとも思った。 誰だろうな、こんな純粋で可愛らしい絢也先輩を俺様会長だなんて呼び出した人は。 見つけ出して是非訂正したい。 チンと軽めの音がエレベーター内に響く。 到着の知らせだ。 ゆっくりとエレベーターの無機質な扉が開かれる。 完全に扉が開かれた事を確認すると、俺と絢也先輩はほぼ同時に歩き出した。 寮は校舎の向かい側に建てられているので、歩いたらすぐに着いてしまう。 つまりここで学生生活を全て送ってきた生徒は登下校なんてものないに等しい。 目的地は登下校共に目の前なのだから。 あっという間に学校の玄関に入った俺達は、お互いのロッカーへと進んだ。 靴を履き替えると先に履き替えただろう絢也先輩が目の前に立っていた。 「じゃあ今日の放課後、頼むな」 「了解です」 俺がヘラリと笑うと絢也先輩は俺の頭をポンポンと軽く叩いて歩き出した。 絢也先輩が他の生徒とすれ違うたび黄色い声が聞こえてくる。 皆口々に「格好良い」と言っているが、俺は人生であそこまで可愛らしい人は見たことないと一人微笑んだ。 俺も自分の教室へ向かおうと歩き始める。 今日も一日平和でありますように。
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