第一話

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「確かに紘夢がこいつを気にかけんの嫌だけどさぁ?それはこいつがぼっちでいるから可哀想っていう紘夢の優しさだし、紘夢がそうしたいって言うから俺らは止めないだけ~」 「その通りです。紘夢が一緒に食事をしてあげようと誘ってあげているのだから、そちらが素直についてくるべきでは?」 チャラ男君が反論した途端、連携を組んで眼鏡の彼も反論してくる。 「あげてるだぁ?随分上からな優しさだなぁおい。いらぬ世話だ馬鹿が。それにもっかい耳の悪いてめぇらのために言ってやるけど、ユキは俺と食べるから」 だがそんな連携にも物ともせずアキはスラスラと返す。 この3人に編入生君も加わりギャーギャー言い合っていると、後ろから絢也先輩が割り込んでくる。 「不知火、嫌ならいいんだ。断ってもいい……正直言うと、俺もお前と食べたかった、と、言うか………迷惑じゃなければ……」 隣の4人は自ら大きな音を立てているせいか、俺と絢也先輩のやり取りに気付いていないらしい。 絢也先輩は照れくさそうに笑って俺の返事を待つ。 こんな顔をされたら断るわけにもいかないなぁ、と俺も微笑み返す。 「いいですよ」 「「「え???」」」 「絢也先輩がそう言うなら」 そう言いながら一度広げた弁当を片付けて席を立つ。 するとアキが慌てて俺の肩を掴んで俺の動きを静止させた。 「ちょちょちょっと待てユキ。いいのか?こいつらとだぞ!?」 「だって絢也先輩も一緒に食べたいって」 そう言うとアキが絢也先輩をギロリと睨む。 絢也先輩はそんなアキの誰もが震え上がる睨みなんて気にせずアキに近付き 「ああ、だから杜ノ塚もどうだ?」 と透明感ある笑顔で聞く。 アキはそんな絢也先輩の行動が予測できなかったのか固まってしまった。 「アキ、俺一回食堂行ってみたいと思ってたんだ。一緒に行こう」 アキの制服の裾を掴んで引っ張る。 アキは観念したように渋々と着いて来た。 俺はアキ以外の人間とご飯を食べるなんて初めてだったから、いつもは億劫なご飯の時間も少し楽しみでついニコニコと笑ってしまう。 俺達の後ろで一之瀬が気味の悪い笑顔を浮かべているとは知らずに。
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