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あれから保険室に行くと黒縁眼鏡君がベットに寝かされ、アキが壁に寄りかかり腕を組んで俯いていた。
頭の出血が予想以上に酷いようで、彼の様子を見る前に烏丸先生に頭に包帯を巻いてもらった。
実際はまず黒縁眼鏡君の様子を見ようとしたのだが、アキが力づくで抑えてきたのだ。
ベッドの横にある椅子に腰掛けながら黒縁眼鏡君を見る。
「…彼の様子はどうだい?」
「あぁ、足首を捻った程度だ。安心しろ」
「そうかい…良かった」
彼の顔を覗き込みながら俺がアキに問いかける。
アキは壁に背中を預けたまま答えてくれた。
気まずい空気が漂う中、深い溜息が何処かから漏れる。
「あ~あ……不知火またお前無茶しやがってめぇ…こちとらそんな暇じゃないっての」
烏丸先生の小さな呟きに俺が反応する前にアキが反応した。
「養護教諭が何言ってやがる」
「うるさい。こちとら葉鳥先生連れ込んで何かしらしようとしてたのによ。タイミングが糞悪すぎる」
「…って事はとうとう関係が進展し――」
「してねぇけどよ」
「…あぁそうかい」
烏丸先生が椅子に腰掛けながら肘をつきぶつくさと文句を言う。
言いながらも、俺を椅子へと腰掛けさせ、てきぱきと頭の怪我に対しての応急処置を施してくれた。
烏丸先生は葉鳥先生の事がどうやら好きらしい。
しかし当の本人である葉鳥先生は全く気付いていない。
周りは直ぐに気付いたというのに葉鳥先生は全くもって鈍感なようだ。
まぁ俺も全然気付かなかったが。
人の事を偉そうに言えるものじゃない。
烏丸先生も先生なりに一応だがアプローチはしている、らしい。
例えば好みのタイプを聞いてみたり、休日に外出に出掛けてみたり、だ。
それでも葉鳥先生は「烏丸先生は何かと気にかけてくれて優しいですよね」と、最悪な事に優しい人止まりとなっているのだ。
その事実を烏丸先生が知った時、さすがの烏丸先生も落ち込んでいた。
それからというもの烏丸先生は強硬手段を取ろうとしている。
そんな事したら嫌われそうだと思うのだが、もう切羽詰まりすぎているのだろうか。
「お前らが怪我しなけりゃ今頃そのベットで葉鳥先生をヤ―――」
「生徒に生々しい話してんじゃねぇエロ教師!!」
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