ありがとう

2/7
前へ
/13ページ
次へ
俊はよく分からなかったが、ついて行った。道中無言である。 (人間じゃないって本当なんだな…) 人通りが多い道を、鎌(血付き)を持っていても、誰もサクヤを気にしない。それよりも見えていない方が正しいのだろう。 何だかんだ考えている内に、俊が住んでいるアパートに着いた。…三年前から、咲と一緒に暮らしていた。 「…サイ…」 サクヤは猫、サイに話し掛けた。 「はい、確かにいますね…」 サイはアパートを見上げる。 「下級の気配だな」 「カイにも分かるか…」 鴉、カイに話し掛ける。 「下級中の下級だな。…あそこにいるぜ…」 カイの視線がある部屋を見据える。 「…あそこは俺の部屋だけど…一体、何を感じてんだよ…?」 俊は首を傾げた。 「来れば分かるよ」 カイの声色が変わり、少しドキリとした。…不安がこみ上げてくる。 玄関前まで来ると、サクヤが話し掛けてきた。 「小僧、妹に会いたいと思わなかったか…?」 小僧と言われ、少しムカついたが冷静を保って口を開いた。 「…そりゃあ、何度もあるよ…」 今でもあの時の咲の顔が、鮮明に頭に浮かぶ…。 .
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加