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俊はよく分からなかったが、ついて行った。道中無言である。
(人間じゃないって本当なんだな…)
人通りが多い道を、鎌(血付き)を持っていても、誰もサクヤを気にしない。それよりも見えていない方が正しいのだろう。
何だかんだ考えている内に、俊が住んでいるアパートに着いた。…三年前から、咲と一緒に暮らしていた。
「…サイ…」
サクヤは猫、サイに話し掛けた。
「はい、確かにいますね…」
サイはアパートを見上げる。
「下級の気配だな」
「カイにも分かるか…」
鴉、カイに話し掛ける。
「下級中の下級だな。…あそこにいるぜ…」
カイの視線がある部屋を見据える。
「…あそこは俺の部屋だけど…一体、何を感じてんだよ…?」
俊は首を傾げた。
「来れば分かるよ」
カイの声色が変わり、少しドキリとした。…不安がこみ上げてくる。
玄関前まで来ると、サクヤが話し掛けてきた。
「小僧、妹に会いたいと思わなかったか…?」
小僧と言われ、少しムカついたが冷静を保って口を開いた。
「…そりゃあ、何度もあるよ…」
今でもあの時の咲の顔が、鮮明に頭に浮かぶ…。
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