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答えを聞くと、サクヤが振り返った。
初めは気付かなかったが、瞳の色が左右違っていた。左は赤というより紅の方が合っているくらい深い色をいている。右は澄みきっているように見える紫。
少しの間、その瞳に心奪われた。
「…何故…」
「え?」
サクヤが口を開いて、我に返った。
「何故気付いてやらなかった…」
サクヤは少し怒っているように見えた。
「……?」
俊は意味が分からず、首を捻った。サクヤは悲しそうな顔をした後、ドアノブに手を掛けた。
「…いいか…目を逸らすな…」
「どう言う意味だ?」
サクヤはゆっくりとドアを開ける。
「…視ろ…お前にも視えるはずだ…」
「だからどう言う意――…っ!?」
視線を部屋に向ける。平凡な自分の部屋。しかし、出掛ける前と明らかに違った。
「…視えるだろ」
サクヤの声が、耳に入ってくる。
俊の目の前には、泣いている咲がいたのだ。
「…さ……き…?」
震えた声が出てきた。俊の声が聞こえたらしく、咲が顔を上げる。
「お…兄ちゃん?」
咲は窶れていた。
「いるんだろ…。姿を現せ…」
サクヤの低い声が室内に響く。
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