君に続く14歩

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それを聞いて、親父さんが腕を組み直す。 じっと何かを考え込む仕草をした。 「……わざわざ早急に、こんなことを言いに来たということは、蘭子の周りで何かあったのだね?」 お義父さんの問いかけに、俺は蘭子へと視線を向けた。 蘭子は嗚咽を堪えながらも、ゆっくりと口を開いた。 「…最近、あの人に会ったの…。蛍と一緒にいる時に。あの人、それであたしに……結婚を迫ってきた。今更」 「何だと?」 「蛍の親権を取るとか何だとか……。それを、景くんが知って…それで、こんな…っ」 「逸って挨拶に来たというわけか」 親父さんは呆れたような、感心したような口調で言った。 「…荒木くん」 「―――はい」 「君は、蘭子を守りたいと言ったね?」 「……はい。」 小さく、でも力強く返事をする。 俺の気持ちが少しでも、親父さんに伝わってほしいと思った。 言葉にできないくらい、蘭子のことを大切に思っている。 これからも、ずっと。 蘭子の傍にいたいと思っている。 「就職が決まったら、また来なさい。今は判断基準にも達していない。返事など出来るはずがない」 「―――。」 分かっていた、結果だった。 だけど、就職が決まるまで、待ってなんか居られなかった。 裕明が先にやってきたら、もう出る幕なんてないと思ったから。 でも。 「――ただ。君の気持ちはありがたかった。蘭子を守りたいと言ってくれてありがとう。だけど1つだけ、間違っていることがある。  私が簡単に、あの男に蘭子を渡すと思ったのか?一度蘭子を傷つけた男に、この私が?  まだまだ君も親父の心というものは分からなかったようだな」 そう言って、高らかに笑った。 本当に、心から笑っているようだった。 「蛍、こっちに来なさい」 そうして優しい声で、蛍を呼んだ。
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