君に続く14歩

10/25
762人が本棚に入れています
本棚に追加
/352ページ
二人で手を繋いで、成人式の会場に行った。 そこには、着物、スーツ、袴を着た、人、人、人…。 あまりの多さに、うんざりする。 「帰ろうかな」 「もぉ!今ついたばっかりなのに」 ぼそっと言った独り言を、蘭子は聞き逃さない。 少し怒った顔をして、俺を見る。 だけど口端が笑っている。 手を繋いだまま、植え込みに腰を下ろした。 蘭子もその場を確かめて、ゆっくりと座る。 豪華に結われた帯が植木に当たらないように気をつけながら。 「お父さんが、あんなこと言うなんてびっくりだった」 カメラを片手に騒ぐ人込みの中、蘭子がぽつりと言った。 「思っていたよりも、ずっとあたしのこと考えてくれてたんだね…」 そう言いながら、そっと俺の手のひらをなぞる。 「…ああ。そうだな」と答えるよりも先に、蘭子に近づいていた。 「―――んっ」 突然塞がれた唇に蘭子が驚いて身を揺らす。 だけど後ろは植木。 身体にはきつい帯。 逃げられるはずもなく、すぐさま俺に捕まる。 「ちょ…っ!! 何するの!みんないるのに!」 ドンっと俺の胸を押し、蘭子が怒って言った。 頬は少し赤く染まり、それがまた愛おしい。 「俺には蘭子だけだもん。他の奴なんか関係ない」 「え、ちょ…!」 そう言って、再びキスをしようとする俺に蘭子が戸惑って身体を揺らす。 だけどそんなの本当に関係ない。 首筋へ手を回し、再びその唇に触れようとした時だった。 「おいおーい!こんなとこにいたのかよ!」 元輝の声がした。
/352ページ

最初のコメントを投稿しよう!