◆・夏期限定・◆

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「ところでさあ、なんでこんなに歩いてるのに、食う所が何もねえんだよ……人も歩いてねえし、妙な地域だよな」 「うん。今はお昼時だし、これだけの会社があるから、誰か外に出てそうなのに……それに、コンビニも自販機すらもない。やっぱり道を間違えたのかな?」 工場が立ち並ぶ地域ではあるから、通りを行き来するらしいトラックの音が聞こえたり、機械の大きな音はあちらこちらからするものの、さっきから自分達が歩いている通りは車も人も全く通らないのだ。 同じ所をぐるぐる廻っている気もしないでもない。 二人で首を左右に振って再度まわりを見るが、いろんな音は聞こえているのに、やはり人影と言うより人の気配すら感じない。 「でもさ……大抵、会社内に食堂や自販機が設置されているだろ?もしかすると外にあったってこの辺りじゃ流行らないから、あえてないのかも」 「う~ん……そうかもなあ……だけど、マジで喉は渇くし、腹も減ったなぁ」 日の当たる場所を見てから『暑いから出るのが嫌になるし……』と竹田は疲れたのか膝を曲げ腰を下ろした。 「タクシーが通れば早いけど、期待できねえな……さっきから一台も車が通らねえとか、ありえねえ~」 「じゃあもう、タクシー会社検索してここまで来てもらう?なんだか道にも迷って脱出が厳しいし」 「ん~……そうだな。この辺りはもうやみくもに歩いてもダメっぽいな」 竹田はそう言うが早いか素早くタクシー会社を調べ始め、僕も今いる現在地がどこなのか調べようとした。 すると…… 向こうから黒く艶々ピカピカと、眩しいくらいに光った車体のタクシーがこちらに向かって走ってくるのが見えた。
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