14人が本棚に入れています
本棚に追加
陽気に話す運転手さんに、竹田も『ですよねえ』と一緒になって笑っているが、僕は話より竹田との間にある人形が気になって気になって仕方がない。
「その子のこと、気になりますか?」
運転手さんが、ミラー越しに僕の怯えているであろう目を見て小声でそう言った。
「は……い。す…少し……恐いです」
僕は見たくもないのに、自然と人形を横目で追った。
「ぶっ…おまえなあ。確かに不気味な人形だけど、いい年して人形が恐いとか乙女か?いや、最近の女の子は強いからな。肉食女子に食われちまうぞ。」
「僕はオカルト的なことは苦手なだけなんだよ。真夏の心霊番組だって、ちょっと夜に一人で観れないだけだ。昼間なら平気なんだからなっ!」
「ぶふふふ…あははは……なんか、意外で可ぁ愛いの♪普段あんまり感情出さねえから余計萌え~♪」
「わ、笑うな!僕は身長と女顔だと言われるより、本当はこの事が一番コンプレックスなんだからな!恐いこと言わないで欲しいだけだ!いいか、だ…誰にも言うなよ」
ドアへ顔をぶつけそうなほど竹田から顔を背けた僕は、ふとミラーからの視線に気づいた。
「へえ……それなら松山さまはきっと、その子に気に入られますよ。その子は恐がらせることが大好きなんです。本当に悪戯っ子でしてね」
僕はまた見たくもないのに横目で人形を見た。
「ひっ…!」
さっきまで正面を向いていたはずなのに、ややこちら側へと体が向いている気がする。
背中がゾクゾクッとして、身体中に鳥肌がたった。
「う…運転手さ……あの…まだ着きませんか?」
震える声で運転手さんに訊ねる。
なんか嫌な感じがしてならない。
竹田は何も感じないのか平気そうで、まだ逆に『どうしたんだよ?』と首を傾げる。
僕はもう、ここがどこでもいいから降りたい。
息が、苦しい。
最初のコメントを投稿しよう!