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「大丈夫ですよ。駅に向かっていますから。もうしばらくすれば……」
「なっ…ちょっと…竹田、おかしくない?僕達、行きは駅から歩いてきたんだよね?なんで、まだ着かないの?」
「この辺は一方通行の多い地域でしてね。方角が逆方向ばかりで少し回らないといけないんですよ」
運転手さんはそう言うが、どう見ても道の雰囲気が先程までとは違う。
ガタガタ…ジャリジャリ……
いつの間にか、舗装すらされていない道を走っているのか、砂埃が舞い上がり、震動が激しく伝わってくる。
「た…竹田ぁ、こんな土の道…」
「恐い恐いと思っているから、どこを走ってるのかわかんねえんだろ?きっとこの道も道路工事中じゃねえの?」
竹田はボンヤリした目で前を向いたまま答えた。
「おや?ああ~あ~、これは大変だ…もう起きてしまったようですね……」
運転手さんがそう言った。
『大変だ』とは言いながらも、さっきまでの抑揚が利いた話し方とはうってかわり、淡々と棒読み口調になっている。
『起きてしまった』って、言った?
『起きてしまった』のって……
“シャッ”と音が鳴り、いきなり運転手さんの座席の背もたれ部分上部に透明の板が出現し、運転手さんと僕達を仕切ってしまった。
「う、運転手さんっ!」
無駄だと思いながらも、板を叩くが、ガラスのようでありアクリル板のようで、一つ言えることはひどく頑丈だと言うこと。
僕の掌は透明の板に呆気なく跳ね返される。
ガッカリする僕の背中に、重たい視線を感じた……
“ぎぎぎっ”と自分の首が軋んだ音をたてそうな気がしながら、僕は背後を見た。
「うっ……」
僕は口を押さえ、叩きつけるようにドアへと飛んだ。
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