Summer Diamond Memory's

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 人通りのない住宅地。目の前はゴミ袋の山・・・。私はそこにいたはずだ。仕事に疲れたもう直ぐ三十歳になる私が。  声援が響く市営球場。私はユニフォームを着てバトンを持っていた。バッターボックスに楠木くんがバットを振り構えている。  真夏の太陽。強い日差し。暑くて、暑くて倒れそうなあの夏の日――。 「由香利、ちゃんと応援しなきゃ」  隣りでポンポンを動かしながら亜由美がキッと睨んだ。 「う、うん」  今でもこのシーンは忘れていない。決勝進出をかけた大切な試合。点数は1対0。残念ながら負けていた。だけど、楠木くんが打てば三塁にいる篠山くんがホームベースを踏める。ツーアウトなだけに楠木くんへのみんなの期待は大きかった。
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