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「知らんかったのぉ~ それなら いらん気起こすわけないかぁ… ガハハ」
部長の何気ない言葉にガツンと頭を殴られたようなショックを受けた
部長とは前の会社で10年近く仕事をしプライベートの付き合いも深い 互いの女関係も知るほどの仲だし家族ぐるみの付き合いもある
だからこそ前の会社で行き詰り悩んでいた自分をN工業に呼び寄せてくれたのだ
お陰で嫁とも結婚し今があるのは部長が居たからに他ならない
最近ついF工業に電話する頻度があがっているのにも気が付いて牽制したのだろうか?
モヤモヤとした胸中を悟られないように平静を装いロッカールームに入り着替えると事務所に入った
そして半分上の空になりつつもF工業に送るFAX用紙に記入事項を書き込み普段通りにFAXを送った
それからは月曜の慌ただしさに紛れてモヤモヤを吹き飛ばそうと仕事に取り掛かるが、やはり簡単にモヤモヤは晴れない…
部長の言葉が胸につかえてモヤモヤし黒い感情が渦巻く いらん気?何が言いたい…わしは ただ彼女を癒したいだけで…それ以上の感情など無いハズなのに…
嫁と娘の顔が浮かぶ チクリと胸が痛んだ 言い知れぬ罪悪感 これは何を意味して…自分でも自分の感情が見えてこない ただ、やたらムカムカとしてイライラし始めていた
そんな最中F工業からの着信があった 条件反射で電話を取ると隣の部長がニヤリと笑ったのが目の端にうつる
週末写メ交換したせいで少しオドオドとした柚月ちゃんの声を聞いた途端にスーーっと心に渦巻いた黒いモノが晴れていく 思わず笑顔になりつつもチラリと隣を見れば部長が現場に呼ばれて席を立つのが見えた
事務所を見回せば自分1人になっていたので思わず気が緩み心の声が漏れでてしまった(笑) すると柚月ちゃんは めちゃくちゃ照れたようでワタワタしだし思わず微笑んだ
ほっこりとした気分でウキウキし始めたのに早くも部長が事務所に戻ってきたのが見えたので名残惜しいが電話を切るべく話を切り上げようとすると柚月ちゃんからの反撃にあい途端に胸がドキドキ高鳴る
仕事中の電話なのに ゆづのタイプ やら よしくんやら ドキドキワードに翻弄されて耳が赤くなり慌てて電話を切った
部長と顔を合わすのが気まず過ぎて仕事に見せかけて事務所を飛び出しながらも部長の意味ありげな笑い声にピクンと肩が揺れ見透かされた悔しさにギリリと奥歯を噛み締めた
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