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「はぁ…お前んとこラブぅ…わしゃ~会社に居る時だけが自由じゃけぇ 嫁なんかに連絡取ろうとは思わんがのぉ…」溜息まじりに苦笑いする田辺さん
するとズボンの中でバイブを感じた おそらく柚月ちゃんからの午後も頑張ろうメールに違いない
早く見たい…だが田辺さんの前で再びスマホを出すのは躊躇われた ヤバイ 早く確認したい
チラリと田辺さんを見やると ちっとも話し足りてない顔で がっつり隣に居座るから はぁ…と溜息をついて我慢した
「ガキでも おりゃ~違ったんかの…」独り言のように呟いた田辺さんの顔は少しだけ寂しそうだった
『あぁ…』なんと返すのが正解か分からず適当な相槌を打つ
「嫁なんか抱く気おきゃ~せんしのぉ…」この呟きには思わず反応してしまった 『やっぱ そんなモンっスよね…(笑)』
「おっ(笑) 分かるか 安ちゃん 嫁なんて いつでも出来るし 燃えや~せんわぁの~ やっぱ女は若いんに限るのぉ」ニコニコと嬉しそうに言う田辺さんに ブハッと吹き出し それを やんわりと否定する
『若さとか関係ねぇし…やぱ好きじゃないと抱きたくはならんっしょ』
「お?おおっ? なになに安ちゃ~ん もしかして抱きたくなるような女でも おるわけ?」
単なる否定の言葉尻を掴まれ思わぬツッコミに言葉が出なかった
抱きたくなる…? 思わず頭ん中には柚月ちゃんの顔が浮かんだ
田辺さんに見えるわけでもないのに思わずブンブンと頭を振り 邪な考えを振り切る
『はぁ?…なわけねぇし…つか田辺さん そんな事ばっか言うとるけぇ 嫁に鉄槌くらうんスよっ ダメっしょ それ…』話をすり替えるべく笑って逃げる
「お前…おもんなぁ… 出逢った事ないわけ?理性をもぶっ飛ばすようなオンナに わし…今でもあいつに逢いたくて堪らんわぁ はぁ 何しよんかなぁ あいつ…会って ただ抱き締めたぁわいや…」思わぬ真剣な表情にギョッとした
「なんじゃろね…触れただけでビリビリくるよぉなオンナって一生のうち そぉ何人も出逢えるもんじゃなぁよな…はぁ…触れたら最期でぇ…忘たくても忘れられん…いや…忘たくないんよな…」タバコを燻らせながら物思いにふける田辺さんの顔は明らかに憂いを帯びて 茶化せる雰囲気じゃ無かった
ただ無言でいたが 振り切るようにニカリと笑うと 「さっ 仕事しよかっ 仕事をのっ…」そう言うと手をヒラヒラと振り持ち場に戻る先輩の背中は確かに哀愁を帯びていた
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