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声の綺麗な人
それが彼女の第1印象
数ある取引先の中の 事務員さん
担当の白井さんに取り次いで貰う時に少しだけ世間話をする彼女の声のトーンは何故だかしっくりとくる
かれこれ数年は そんな関係
その関係に新たな風が吹いたのは…前触れなく退職した担当の白井さんに代わり新たに担当になったからだった
いつも 余裕のある風情で対応してくれていた彼女の泣きそうな声を初めて聞いた瞬間 何かが湧き出た
「実は…白井は急に退職の運びとなりまして…引き継ぎなしで申し訳ないのですが…本日からはワタクシが担当となります…あのぉ…まだ混乱の最中でご迷惑をお掛けしますが…よろしくお願いしますっ 改めてまして神谷です…」
確かに昨日 電話をした時、担当の白井さんは珍しく休みを取っていたハズなのに翌日には退職となっていたようだ…
キャピキャピした若い娘だったのは分かっていたが…
うちの半分ほどの規模のF工業は事務の女の人は2人だったハズ
『もしかして1人になっちゃいました?』思わず聞いてしまった…
「ははっ…デス…ね 暫くは私が担当となり新人さんが入って再び担当を任せられるようになるまで…よろしくお願いします…ね?」
『ふふっ(笑) そんな自信なさそうな声っ 初めてじゃないっスか~ 分からない事あったら遠慮なく聞いて下さいね 改めまして…よろしくお願いしますね 神谷さん』
なんでか…この時のやり取りは凄く印象に残っている
キモい言い方になるが 実は普段聞かない不安げな声に 少しだけ掴まれてたんだろうな…
心臓鷲掴み的なんじゃなくて 心臓に指先でキュっと 摘まれる程度とは言え 久し振りのこんな感情に少しだけ気分が高揚したんだ
それからは電話で話すたびに 分からない事を質問してきたり やり取りをスムーズにするためにFAXを送る事にしてみたり…
最初の印象通り仕事熱心で出来る事務員さんっぷりに… 彼女の印象は良くなるばかり
同い年な事…住んでる場所が同じ学区内な事…なんかも以前から知っていただけに親近感は増し気付けば彼女の会社に電話して話すと仕事のイライラなんかが吹き飛んで笑ってることに気付いたんだよな
応援したくなる
そんな同志に対するような気持ちだと思ってたんだ…
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