朝日

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笑って欲しい…やましい気持ちからじゃなく、ただただ心から元気付けたいと思っただけ それでも、ホワイトデーの前夜ギリギリまで どうすれば さり気なく渡せるかばかり考えまくって やっぱ恥ずかしいかも?とか(笑) お前は女子かってレベルで あ~でもない こ~でもないと…考えるのは案外楽しかった 例え一瞬であっても フッっと微笑んで貰えたら それだけで本望って思ってた メッセージは最初は付けるつもりなんて無かった だいたい手紙なんて女の人に渡した経験なんて皆無で どう書けば自然かなんて本気で分からなかった それでも何かを伝えたくなって 短いメッセージを何度も書き直しているうちに自分のメアドも書いてしまっていた 頭よりも手から感情が漏れたのかもしれない 夜F工業に送る定期便に 忍ばせたメッセージ付き伝票 今 事務員さんは彼女しか居ないのだから このまんまが さり気なさの演出か?と思い無造作に飴とメッセージを入れた 柄にもなくドキドキしながら封筒にそれらを入れる自分 定期便の通い箱に いつものように伝票の入った封筒を入れ これを見た時の彼女を想像するだけでニヤニヤしてしまった 「おっ 安ちゃん もぉあがり?」なんて部署が違う先輩の田辺さんが声をかけてきた この人は 自分と同じく中途入社組 社内では1番歳も近く なんだかんだ言って仲良くさせて貰ってる人だ 『ははっ そうっスよ はぁ たいぎ~けぇ』そう笑って答えるとガハハと笑ってヒラヒラと手を振った 「なんやぁ?なんか ええことでも あったんか?ニヤニヤしとったで 安ちゃ~ん」 『なんも無いっスよ んじゃお疲れ様です』緩みそうになる口元を引き締めて着替える為にロッカーに寄った なんだろう? ウキウキしてる? 彼女に笑って欲しくて した行動が結果 自分に微笑みをもたらしてる 彼女にも笑って欲しいな…そんな事を思いつつ いつになく軽快な足取りで車に向かいながらもフと夜空を見上げた 昼間の電話で彼女が言ってたな… 毎晩 仕事あがりには夜空を見上げて萎えた気持ちを奮い立たせるんだって ラグビーボールみたいな形をした月は夜空に美しく輝いていた あれ?月って こんなにキレイだったっけ? 彼女から言われるまで夜空を見上げる気持ちなんてなれなくて久しぶりに見た月は 想像以上に仕事終わりの疲れた身体を癒してくれた
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