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「若様、おやすみなさい」
『オーバード』という名を貰った私は、若様に名前を頂いた後、直ぐに若様の側近という立場に着かせて頂いた。『ボクの一生をその目で見届けるなら、いつでも近くに居る方がいいだろう』という若様の計らいによってだ。
が、この側近という立場はそう易しいものではない。特に、若様の様にまさに貴族のお坊っちゃまといった人間の側近なら、尚更。
若様とてまだまだ幼い子供だ。夜は疲れきって素直に眠ってしまわれることが、何よりの救いだった。
そうして、若様が眠ってしまわれた後、私は考える。それは、いつも私を悩ませている事だった。
若様の美しい髪を櫛ですく度に、朝起きて顔を洗い、鏡で自分の顔を見る度に、若様は成長し年を重ねていくのに。何故、何故なのか。
自慢に聞こえるかもしれないが、私はこれまで老いを感じたことはない。
よく思い返してみれば、私の体は少しどころかかなり可笑しい。考え事をしすぎると妙に体が熱くなったり、風呂に入った時に男の象徴であるそれがないことや、先程言った老いを感じないのもそうだ。老いを感じないというか、体の変化が全く無いのだ。人間が年を重ねると増える、皺や、シミ。それすら無い。いつも通りの真っ白な肌に、艶のある髪。まだ十七だから、と言うかもしれないが、洗顔を忘れてニキビが出来たことはないし、日焼けもしない。というか、十五の時から全く成長していないのだ。何一つ変わってはいない。こんなにも人間味がないなんて、これでは、まるで…。
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