魔族狩り協会

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後日、魔族狩り協会は設立された。 あらかじめ集めておいた魔族狩り数人と、ジョシュア様と、私というメンバーだ。今でこそ少ないが、これからもっと増えていくのだと私は何故か確信している。 魔族狩り協会の掟は、『一、魔族は絶対悪である』、『一、魔族や魔物は絶滅すべきである』という滅茶苦茶なものだ。 けれど、それも仕方がない。この協会は、表面上ジョシュア様が会長ではあるが、結局のところ旦那様がジョシュア様を操り人形にしているだけなのだから。設立の費用も全て旦那様持ちで、何より旦那様は魔族が嫌いなのだ。この滅茶苦茶な掟も、旦那様が決めたものだ。 旦那様が影でジョシュア様を指示し、ジョシュア様はそれをただ実行するだけ。実に簡単で汚い。 到底理解出来ないが、私だって命は惜しいし、それに、とやかく言える立場ではないから、特に口出しもせず。 ジョシュア様は、協会が出来てから魔族狩りとしての仕事は一切なさらず(というか出来ないのだが)、日々淡々と書類を書く毎日だ。 ジョシュア様は少々根を詰めすぎてしまう癖があり、先程から休憩も無くずっと書類を書き続けている。 以前ジョシュア様にお茶を持っていったことがあったのだが、まだ要らないと言われてしまった。その時のジョシュア様はもう2時間も書類を書き続けていたので、流石に休憩を取った方がいいのでは、と思ったのだが。ジョシュア様の性質上、そうもいかないようだった。 しかし、今日ばかりは違った。珍しく仕事中に私を呼んだのだ。 「オーバード」 仕事中のジョシュア様の、淡々とした声色。それでも私に手伝えることがあるならば、とすぐに反応を返した。 「紅茶を淹れてくれないか。いつもの紅茶でいい。」 筆を走らせながら、ジョシュア様はそう仰った。 私は少し驚きに固まったが、ジョシュア様がそう仰るならば、と二つ返事で引き受け、準備をするために厨房へ向かう。 途中、ジョシュア様が私を引き留められたので、なんの用かと尋ねると、ジョシュア様は普段滅多に見せない笑顔(というか微笑みだが)でこう仰った。 「いつもありがとう、オーバード」 思考が一瞬停止した。それほどの威力の発言を、今ここで言うのか。 私は、光栄ですとだけ述べて、そそくさと部屋を出て行く。 私を見送る視線が、なんとも慈愛に満ちていたのを、その後も意識せずにはいられなかった。
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