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私は、彼に作られた人形だった。そして、私の制作者である彼は、とても不思議なひと。
「×××、君、人間になってみたくはないかい。」
ほら、今日だって可笑しなことを言い出した。
「お言葉ですがマスター××。それは有り得ません。」
指摘すると、彼は言うと思った、という顔で、こう返した。
「×××。その聡明な頭でよく考えてご覧。君は感情もあるし、そうやって何かを考えることも出来る。人間だと言うには充分すぎる理由だと思わないかい。」
確かに、彼の言うことは正しい。どれも人形にはない、人間だけの特権だからだ。
しかし、私は人形なのだ。誰かが私を人間の様だと称えたところで、私は人間になどなれはしない。所詮はただの良く出来た機械なのだから。
「あとは、君が『自分は人間だ』と思い込めばいい。たったそれだけで君は人間になれるんだ。実に不思議で素敵だろう?」
…彼の思考は、理解不能だ。否、彼だけでなく人間とはそういうものなのだろうか。生憎私は彼以外の人間に会ったことは無かったので、それについてはよく解らない。
私の顔を見て、彼はくすくすと笑い、実に愉快だ、と言った。
「ああ、面白い。×××、お前は少し頭が固すぎるな。…ああ、機械だから固いのか、そうかそうか…くくっ」
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