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…なんと下らない理由なのだろう。私には何が面白いのかさっぱりだ。
「…笑いすぎです。」
半ば呆れたように言うと、彼はようやく笑うことをやめた。まだ若干口が笑っているが。
「くくく…ふ、ごほん。×××。知っての通り、君は実に精巧なつくりの人形だ。しかも、まだ僕にしか存在が知られていない。…これが何を意味するのか、先程の話と合わせると、理解力のあるお前なら解るだろう?」
つまり、まだ誰にも存在が知られていないから、私が人間だと言えば、誰にも疑われず生活出来る。それは、まさしく私が人間になったのと同じことだ。…と、彼は言いたいのだと思う。
「…うーん。実に聡明だなお前は。話をしていて気持ちがいい。ああ、大丈夫だ。これで確信したよ。お前ならやっていけるさ。何と言っても、この僕の最高傑作なのだから。」
言いたいことは解る…が。
「…マスター××。私は時々貴方の思考が理解出来ません。」
すると彼は、私の頬を両手で包み、目線を合わせた。
「それでいいんだよ、×××。どうせ君が目を覚ます頃に僕は"居ない"のだからね」
彼が軽々と言ってのけたそれの理解が、少し遅れた。
「それは、どういう」
彼が何かを呟いたあと、私は強制的に全機能を落とされる。目の前が、真っ暗になった。
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