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「ええい、新人は何をしているのだ!もう二時間も過ぎているぞ!」
薄い亜麻色の髪の少年が、苛立ちを隠せない様子で地団駄を踏んでいる。
その風貌からして、12歳程度といったところだろうか。
「ああ、ジョシュア坊っちゃま!あともう少しで到着する筈でございます!もう暫くの辛抱を!…あの新入り、何をしているんだ!おい、誰かさっさと連れてこないか!」
太り気味の男が、猫撫で声で少年を宥めている。少年は、あと一時間待って来なかったら契約は破棄だ、と仏頂面で怒鳴りつけた。
少年の名はジョシュアという。魔族狩りの名門として知られる、ローゼンクランツの次期当主だ。
よく手入れのされた長く美しい髪、そして、まだあどけなさの残るその顔には、既に当主になる者の威厳が表れている。気高い獣の様なその容姿は、まさに美少年と呼ぶに相応しい。
家臣達がそそくさと例の新人の捜索に出ていくと、ジョシュアは相変わらずの仏頂面で豪勢な椅子にどすっ、と座る。それから足を組んで、机の上の皿に乗った葡萄に手を伸ばす。
そうして葡萄を一房手に取ったジョシュアは、それをあっと言う間に食べてしまった。
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