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その答えを聞いた途端、とうとうジョシュアは大きな溜め息をついてしまった。
「…お前、名前は」
もうこの話は終わりだとばかりにジョシュアが青年の名前を問うと、青年はランジエだと答えた。
「…ランジエか」
ところがランジエは、違いますと首を振った。
それを見たジョシュアは、意味が解らないといった顔でランジエに問う。
「じゃあ、お前は何なのだ。」
ランジエは、真剣な顔付きで言う。
「私の本当の名前はありません。名前を頂く前に捨てられました。そして、施設で育てられ、施設の方々にランジエという偽名を頂いたのです。…"名前"は、本当に仕えたいと思える人に付けて貰いなさい、と。」
ランジエは、それから少し間をおいて、若様、とジョシュアを呼んだ。
「貴方に、私の名を付けて頂きたいのです。…よろしいでしょうか?」
ランジエの伺う様なその視線に、ジョシュアは少し悩んだ後、いいだろう、と許可を出した。同時に、ジョシュアは条件を出す。その代わり、ボクが死ぬまで着いてくると誓うか、と。
「勿論です。名前を着けて頂く以上、貴方の一生をこの目で見届ける覚悟ですから。」
ランジエのキッと釣り上がった深紅の瞳には、しっかりとした覚悟の色が見えている。
その瞳を見て、ジョシュアはこの人間なら側に置いてやらなくもない、と一人思ったのだった。
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