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バンッ!
勢い良く開かれた勝手口の扉が、心無しかギーギーと音を立て悲しげに見える。
「間に合った!」
穂奈美は壁掛け時計を指差し嬉しげに胸をはった。
時刻は17時。
ここから23時までの6時間、週5日を穂奈美はここ喫茶フォレストでアルバイトをしている。
「穂奈美さん、間に合うとは時間ちょうどに来ることじゃありませんよ」
そう優しい口調でたしなめるのは、このお店のオーナー。
長身で黒髪、メガネが似合う29歳。
「あ、雅樹さん。お疲れ様です」
「ははは、僕はまだ疲れていませんよ。疲れているのは寧ろ穂奈美さんの方なんじゃない?」
「そんな、滅相もございません!これからバリバリ働かせていただきます!!」
穂奈美はそう言うと、右手で思い切りガッツポーズをした。
「頼もしいなー。じゃあ口元を綺麗にして準備ができたら宜しくね」
「くちもと?」
雅樹がにこりと笑ってホールへと向かう。
穂奈美は小首を傾げながら荷物を置き、鏡を見た。
「いやぁぁー!!」
更衣室に響く穂奈美の断末魔。
「みみみ、見られた!雅樹さんにヨダレ姿見られたー!」
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