内田真人【17歳】『リアル人生デスゲーム』<自宅・ログイン>

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 【ご登録ありがとうございます!】  ルールに則り、ゴールを目指して頑張ってください。では、こちらから『リアル人生デスゲーム』をダウンロードしてください。  真人は画面下部にあったダウンロードボタンをタップした。  だが、ゲーム画面ではなく、真っ白な画面に文章が表示されているだけだった。  【駒が揃うまでお待ちください。揃い次第、メールにてお知らせいたします】  (人生ゲームを始めるにはユーザーの数が達していないのか。それなら仕方ないか)  そのとき、着信音が鳴った。  画面に彼女の木村直美(きむら・なおみ)の名前が表示されていた。  直美とは小学校から仲が良く高校も一緒。その後、男女の関係になったのは去年の夏休み。幼馴染同士なので互いのいいところも悪いところも理解し合えて、一緒にいて楽、それに楽しい、真人にとって最高の存在だ。  真人は通話ボタンをタップし、スマートフォンを耳に当てた。  「もしもし」  『もしもし、じつは今日、ボナンザっていうギャンブルサイトから封書が届いたの。アプリの人生ゲームで一着から三着でゴールできたら賞金が貰えちゃうの。しかも一着が……』  「知ってるよ。一着が1億、2着が5千万、3着が2千5百万だろ。ウチにも届いたもん。オレはログインしてユーザーになったよ。でも、まだ人生ゲームができるほど人数が揃ってないみたいだよ」と教えてあげた。  『えー! ログインしたの?』  「うん、したよ」  『真人がしたなら、あたしもしちゃおっと! もし、あたしが1着だったら、将来真人が動物病院を開業する時、立派な病院をプレゼントしちゃう』  「それは嬉しいけど、ちょっと胡散臭いからもらえない確率の方が高いと思うけどね」  『夢があっていいじゃん。でもさ、けっこう物騒なルールだよね。人生頂くとか。だってそれって殺しますってことでしょ? それに存在を無にするとか意味がわかんないんだけど』  「ああ、オレも同じことを思ったけど、実際にゲームをプレイしたらわかるんじゃん?」  その時、台所から夕食を知らす美由紀の声が聞こえた。  「真人、ご飯できたわよ」  カレーに反応する真人。  「ご飯できたみたい」  『真人のお母さんは料理が上手だから羨ましい。うちのお母さん苦手なんだもん』  「また今度食べに来いよ。お前が来たら旨いものたくさん作ってくれるからオレもラッキーだし」  偶に夕食を共にする事があり、食いしん坊の直美はその度におかわりする。遠慮せずにパクパク食べる直美が可愛いのか、美由紀も作りごたえがあるようで豪勢な食事になるから真人も嬉しい。  『やったぁ!いつでも行っちゃう』嬉しそうな声を上げた。『じゃあ、真人、ご飯が冷めないうちに』  「うん」  『それじゃあ、あしたね』  「おう」  食事の最中のスマートフォン弄りは禁止。真人は電話を切って、スマートフォンをベッドに置き、リビングに向かった。  大好きなミートボールカレーとバランスの良い野菜サラダが用意された二人掛けの食卓テーブルに腰を下ろした。  「さあ食べましょう」  「いただきま~す」  真人が美味しそうにカレーライスを頬張る顔を見て、笑みを浮かべた。だがその後すぐに、真面目な面持ちで話を切り出した。  「あ、あのね、真人。聞いて欲しい話があるのよ」  「ん?なに?」  「実は……」  「なんだよ。早く言えよ」  「母さん、二年前から付き合ってる人がいるの」  「はぁ!? マジ?」驚いて目を見開いた。「い、いや、まぁ……」ちょっと動揺。「母さんが好きになった人ならいいんじゃない? オレ再婚とかぜんぜん反対してないし。で、どんなヤツ?」  継父になる可能性もあるわけだから訊いてみた。  美由紀は俯きながら正直に答えた。  「向かいのコンビニの店長さん」  あまりに唐突。驚きの返事にカレーを吹き出した。  「ブッ!」  「きゃ、汚いわね!」  「マジ言ってんの!?」  「うん」  「いい人だけど、ガチでビビった」  (だからオレの名前を知っていたのか)  「でね、明日の午後3時から智也さんと二泊三日で旅行に行こうかって話になって……」  「旅行……」  「いいよ、行ってこいよ」  (なるほどね、店長がオレに話し掛けてきた理由も、機嫌がよかった理由も合致したよ。そ~ゆ~ことね)  「いいの?」  「うん。女手一つでオレを育ててくれたんだ。苦労ばかりじゃなく、そろそろ羽を伸ばしてもいいじゃない?」優しい言葉をかけた後、悪戯な笑みを浮かべて言った。「オレが大学に進学したら、母さんも独り暮らしじゃん。店長と同棲しちゃえば?」  息子に愛する彼氏の存在を認めてもらい、嬉しく思った。  「気が早いわ」  母を独りにするのは心配だったし、再婚でもしてくれれば安心だ。あの店長ならギャンブルに溺れる事もなさそうだ。  真人は食べ終えたカレー皿を美由紀に差し出した。  「おかわり!」  「はい」カレー皿を受けとった。「いっぱい食べてね」
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