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プロローグ
ボナンザとは、僥倖、鉱脈、富鉱帯、つまり一攫千金のことである―――
謎のゲームはいつでもどこでも、どんな時代にも行われてきた。誰が作ったのか……妖怪の仕業か……異世界の者の仕業か……怨霊の仕業か……いまのところ不明。
この世界を制御しているのは、目に見える存在ばかりではないのだ……
・・・・・・・
とある高校にて朝のホームルームの時間がやってきた。担任教師が教室に足を踏み入れた瞬間、騒がしかった教室は静かになり、教壇に立った教師に生徒ら全員が顔を向けた。
教師は空席を見てから、全員に言った。
「みんなが知ってのとおり、あいつは無断欠席する子じゃない。ご両親に連絡を入れてみたんだが、無断欠席するようになった三日前から様子がおかしい、と言っていた。
そんなわけで、みんなに訊きたい。あいつから連絡をもらったり、相談されたとか、なんでもいいから、そうゆうのないかな?」
ひとりの生徒が言った。
「クラスメイト全員でLINEしてみたんですけど、返信がなかった。こんなこと初めてだよ」
教師は深刻な表情を浮かべた。
「そうか……」
そのとき、ドアが勢いよく開き、無精髭を生やしたスウェット姿の少年が教室に足を踏み入れた。血相変えた少年が手にしているのはスマートフォンのみ。制服すら着ておらず、鞄もない。
教師はいましがた心配していた生徒の姿に驚いた。
「おまえ、いったいどうしたんだ……」
必死の表情の少年は、教師にしがみついた。
「おれ、正直に言って先生のこと好きじゃなかった! でも、殺したいだなんて思ったことなかったよ! だけど、先生のことを殺さないと、あいつらみたいに消されちゃうから!」
教師は顔を強張らせた。
「あいつら? 誰のことを言ってるんだ?」
「クラスメイトだったじゃないか!」と言ってから、生徒らに大声を張り上げた。「お前らだってあいつらと仲良しだったじゃん! どうして何も覚えてないんだよ!」
教師は宥めようとした。
「とりあえず、落ち着こう」
「落ち着いていられるか!」と大声を張り上げた少年は、スマートフォンの画面を見て、顔面蒼白になった。「うそだ……ゴールした。三着が決定した。オレは四着だ」今度は頭を抱え、膝から崩れ落ちた。「オレはあいつらみたいに消される!」
スマートフォンの画面に『ゲームオーバー、人生を頂きます』と文章が表示された瞬間、少年の体はジグソーパズルのように砕け散り、黒い灰となって宙に舞った。
少年が消えるのと同時に、スマートフォンも空席だった彼の席も、彼個人の存在はすべてこの世から消えた。
教師は首を傾げた。
「あれ……オレいま何してたんだ?」
生徒が冗談を言った。
「歳なんじゃないんですか?」
「うるさいよ。オレはまだまだ大丈夫。さあ、ホームルームの続きをしよう」
いましがたここにいた少年の存在はどこかへ消えた。そしていつもどおりのホームルームが始まった。
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