Side : Toru 11

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優が『母さんは応援している』と話していたし、俺も漠然と感じてはいたけれど、これほどに賢吾のことを尊重してくれているとは思わなかった。 にじんでくる涙をこらえるので精一杯になった俺は、あわてて賢吾にスマホを渡した。 賢吾は俺の状態に気づき驚いていたようだったが、冷静に電話に出てくれ、仏壇の件を説明した後はほっとした表情になり、最後には楽しそうに笑いながら電話を切った。 『お母さん、優くんに先越されて悔しいんだって。8月の上旬に来られるそうだよ』 そう言った賢吾の瞳も少し潤んでいて、照れくささを隠すように俺を抱きしめた。 『いいご両親だね。ちゃんと、挨拶しないとね』 『そうだな』 掠れた声でしか返事ができなかった。
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