Side : Toru 1

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賢吾にうつしたくないから、俺はここに住みだしてはじめて自分の部屋のベッドで寝起きしていた。   俺の肩を賢吾が抱き寄せ、こめかみのあたりにキスをしてくる。 ふわりと賢吾の匂いがする。 メンズ・トワレの香と、賢吾自身の香が混じりあった馴染みのある匂いのはずなのに、久しぶりに感じたせいか鼓動が少し早まる。 けれど、そのまま寄り添ってソファにゆったりと座っていたら、すぐに動悸も落ち着いてやすらいだ気分になった。 恋人と過ごす時間がこんなにリラックスできて、おだやかなものなら、大学時代の彼女も会社員の時の彼女も本当の意味での恋人ではなかったのだと思う。
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