Side : Suguru 1

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兄貴が住んでいるはずのアパートの青いドアの前で、おれは呆然と立ち尽くした。 『北川なんて知らない。あんた部屋間違えてんじゃない?』 現在の住人にインターフォンですげなくされてはじめて、ここに兄貴が住んでいないことを知った。 頭の中がクエスチョンマークだらけのまま、とりあえず建物の玄関前まで戻る。 時刻は夜9時半。 外は真っ暗で、たいして明るくもない街灯がポツポツと立っているだけだ。 札幌は真夏でも夜になれば少しは涼しくなるのに、ここでは生あたたかい風が吹く。
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