育毛剤

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「佐古田の脳は私が支配している。私には、いや、我々には、君が必要なんだ。」 ユカリは今度は足の自由を奪われた。 「いやっ、いやああ!」 ユカリが抗って手足をばたつかせると余計に蔓はユカリの細い手足に食い込んでいった。 「騒いだらダメだよ。近所迷惑になるだろう?」 佐古田では無い何かが、佐古田の顔の筋肉をあやつり口角を引き上げ厭らしく笑う。 生い茂る葉っぱがユカリの口の中へ押し込まれていく。 声も奪われたユカリの足をを静かに、そして力強く開いて行く。 「痛くないようにするからね。暴れたら、君の体が傷つくだけだから。じっとしていてね。君は、我々の子孫の繁栄に協力してもらわなくてはいけないんだ。我々は、人に寄生して、脳を操り、移動しながら子孫を増やさなければならない。我々が最初に寄生した人間が、科学者でなかなか頭の良い人間でね。彼の脳からいろいろ情報をもらったよ。しかし、育毛剤とは我々の起源も考えたものだよ。労せずして、直接脳に近い所へ侵入できるのだからね。喜びたまえ。君は、我々の子供を産むんだよ。いわゆる、人間と、植物のハイブリッドだ。ハイブリッドの、新しい幕開けだよ。」 ゆっくりとユカリの体の中を植物の触手が進んでゆく。ユカリの顔が苦痛に歪んだ。 数日後、田中ユカリの捜索願が出された。 「あなたの髪を確実に復活させます!」 俺は、そんな謳い文句を醒めた目で追っていた。 電車の吊りチラシに、誰にでも読めるようなことさら大げさなフォントでデカデカと書いてある。 「綺麗な娘だな。」 チラシの中で、田中ユカリが微笑んでいた。
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