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ここは、
小さな露店広場、
通称ヤヤンバル広場
地面は石畳みで適度に整備されていて、
まわりには石作の小さな家々がある。
広場の中心には、
ここのシンボルでもある井戸がある。
(噴水は、もうちょっとミヤコ側の設備なので。)
井戸があるのは、
そこが人々の生活の中心地であり、
最寄りの広場と言うことである。
...
...
露店での生活物資の調達、
水汲みにくる奥様方の井戸端会議、
ワイワイガヤガヤと、
騒がしいのは、
いつもの事だけど、
今は、
耳に嫌悪感を染み込ます。
「ガシャーン!!ガコーン!!」
耳を塞ぎたくなる様な衝突音。
何かを地面に叩きつける音と共に、
無邪気な子供の様な笑顔を
キラッキラッとさせながら、
筋肉質なおっさんが暴れていた。
「あぁん?誰の許可取って、此処に店出してんだぁ?」
「俺のブーツに何当たったじゃないかぃ!」
右手には酒ビン。
左手にはロングソード。
その出で立ちと、言動は、
完全に危険人物として認識させるには、
十分である。
筋肉質のおっさん、
もとい、
悪質な酔っぱらいは、
此処いらでは有名な、
武力信教のザッガとう男だ。
ちょっと気にいらない事があると、
ロングソードが真っ赤に染まる。
店の出品主は、
ヒィヒィと泣きながら、
殺されまいと、必死に謝っていた。
...
...
ここは、
誰でも店を開く事ができる露店会場。
なので、
旅をしながらでも、
此処に立ち寄って、
店を開く商人も多い。
...
商人、客、共に、
刹那に出逢いと別けれを繰り返し、
物語の一節となる。
運が無ければ、
もう2度と出逢わない人も居る。
...
...
「泣く暇があるなら逃げ出せば良いのに...」
...
...
そう、
呟いたのは、
この地に住む、
少女、ウタである。
ウタは、
さほど美味しくも無い薬草入りのクッキーを売って生計をたてている。
...
...「逃げ出せばいいのに」
そう、呟けるには、
被害に遭っている露店からけっこう距離が離れてるからである...
ウタは、
そそくさと、店仕舞いをし、
逃げ出す準備を始めた。
...
ウタの回りの露店も同じ様な行動をとってる。
もはや、ここの常識。
絡まれたら、
商品を捨てて、
逃げればいいのだ。
それがここでの、生き残れる道なのだ。
...
...
誰も助けちゃくれない。
...
...
目線をさっきの騒ぎの露店に向けると、
すでに、
ロングソードが真っ赤に染まっていた。
...
...
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