第1章

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 汗が滴り落ちる程の暑い日だった。  私は、久しぶりに、祖母の家を訪ねた。  幼いころは、よく遊んでもらっていたが、大学生にもなると、疎遠になっていた。  訪ねたのは、母から、荷物を預かったためだ。  私も知っている和菓子の店の名の入った包装紙がしてある。  祖母は、喜んで迎えてくれた。  帰りに祖母から、くしをもらった。  整理していたら、出てきたものだから、と言って。  朱色のきれいなくしだった。  どこも剥げたりしていないし、傷一つない。きっと、上等なものなのだろう。
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