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01
耳を劈くセミの鳴き声を聞きながら、俺は帰路につく。
夏休みを目前に控えた七月─学期末考査も終わり、下校時間も自然と早くなってきている。
自転車に乗り、俺は噎せ返るような暑さの中を颯爽と駆け抜ける。
─また、この季節だ。
俺は街の小さな電気屋の前を通り過ぎようとしたところで、ふとそんな事を考えてしまった。
嫌な思い出が蘇る。
『館森高校エース熊谷、また打たれましたー!これで16対0!この回なかなか終わりません!』
電気屋の外に置かれた売り物のテレビから、高校野球の実況が聞こえてきて、俺は自転車を漕ぐ足を止めた。
館森高校。俺の通う高校である。
相手は七ツ森高校。
そんなに強豪ではない高校なのだが、思いの外、点をとられていた。
しかし俺は今更そんなことで驚きはしない。悲しくもならない。
何故なら、こうなるであろうことは大体予測できていたからだ。
確かに予想以上にズタボロだったけれど、ボロ負けするということは分かりきっていた。
去年創立したばかりの館森高校野球部は公式戦0勝という記録を伸ばし続けている─つまり超弱小高校なのだ。
弱い。その一言だけで表し尽くせるほどの圧倒的弱さ。
それがうちの高校だった。
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