ある日私は、眼を拾った。

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--ポフッ  白杖の先が何かに当たり、それを伝って私は柔らかな感触を覚えた。  なんだ、コレは。困るな。点字ブロックに物を置かれては。  私はそれを退かそうと、体勢を低くし手を伸ばした。  それはぬいぐるみのように異様に軽かった。  手探りでその形を識別すると、すぐに正体が分かった。  間違いない。人形だ。きっと子供が落としてそのまま気付かず行ってしまったのだろう。  このままここに置いておくのも忍びない。面倒だが、交番に届けるとしよう。  交番は進行方向とは逆方向にあったと思い出し、引き返そうと点字ブロックの上で180度向きを変えた、その直後、 『--拾ってくれてアリガトウ』  すぐ近くから、少女らしき声が聞こえた。
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