ある日私は、眼を拾った。

6/11
前へ
/11ページ
次へ
「おぉ……おおーーっ!」  興奮した私は年甲斐もなく声を上げ、その場でバンザイをした。  すると何故か視界が急に高くなり、空を映し出した。 「あわ!?」  突然の事に驚きよろける私。腕を下ろすと視界が低くなり、再び周りの通行人を映しだした。  一体、どういう事だ? 今視界に映るこの景色、何かおかしい。  まるで、そう……。例えるならビデオカメラを持っていてその映像を直接見ているような感じだ。  しかし、今持っているのはビデオカメラではなく、長年愛用している白杖と、今しがた拾ったこの人形……。  人形が気になり何気なく人形と向き合ってみた。つもりだったが、何故か視界に映ったのは、どこかで見覚えのある中年の顔。  私の、顔だ……。  シワや白髪が増えている。随分と、年を取ったものだ。  20年振りの自分との対面に、思わず笑みがこぼれた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加